商売をするにあたって在庫は少ないほうがよいのだ。
「在庫は悪だ」と言い切ってもいいくらいだ。
在庫があるとなぜ損をするのか?商売をするにあたって、どうして在庫は少ないほうがよいのか?たとえば、食品には、時間が経てば経つほど鮮度が落ちて、商品として成り立たなくなってしまうという賞味期限がある。
食品以外の商品でも、時間が経てば流行から取り残されたり、破損したりする危険性も増していく。
もしかしたら、なんらかのミスで紛失したり盗まれたりするかもしれない。
これらの損失を会計用語では棚卸減耗損と呼んでいる。
次に人件費である。
在庫を管理する人が必要だろうし、在庫がまだ商品としてちゃんと使えるかどうか確認する手間もかかってしまう。
そして当然、場所代もかかる。
倉庫を借りるならその倉庫代がかかるし、お店のなかに置いたとしても、その分、他のものを売るためのスペースがなくなってしまう。
もし早い時点で在庫に見切りをつけて捨ててしまっていたら、在庫発生後にかかってくる人件費や場所代は浮く。
そして、そのお金を貯金なり投資なりにまわしていたら、もっとお金が増えていたかもしれない。
「もしも浮いたお金を運用していたら」という仮定が前提だが、これも会計では「得られたはずの利益が失われた」とみなして機会損失と呼ぶ。
損失にもいろいろあるが、これも損失のひとつである。
在庫を持つとさまざまな損失が発生する。
これらの損失のことを「在庫コスト」と呼び、商売するにあたっては少ないほどよいとされている。
もちろん、まったく在庫を持たなければ、それはそれで儲かるチャンスを逃すことになってしまう。
売れている商品も「売り切れ」「在庫ナシ」ということで処理されてしまうからだ。
要は、「多くてはダメだがないと困る」のが在庫で、その量の微妙な調整が重要なのである。
かんばん方式はなぜすごい?そこで最近では、ITを利用して在庫量を調整している会社が多い。
たとえばユニクロは、商品が1点買われるごとにオンラインでその情報を伝え、新たに1点ずつ製造するという方法を取っているので、在庫量は一定して少なく維持できている。
さらに店頭でも、実際の商品量より多く見えるようにディスプレイを工夫したりして、少ない在庫でも済むように頑張っているのである。
また、トヨタ自動車躍進の中核ともいえる「かんばん方式」という生産管理方式をご存知の方も多いだろう。
これは自動車を作る際に、川下の工程から川上の工程に向かって、「部品をくれ」「材料をくれ」とかんばん″を使って指示していくという、伝言ゲームみたいなものである。
これだけならどこがすごいのかわからないだろうが、その伝言の中身が「必要なものを必要など書に必要な分だけ指示する」と決められているので、基本的に各工程で在庫が発生しないようになっているのである。
自動車の場合、完成・出荷までの工程が多く、各工程で在庫が発生すると場所も取られるし管理費もかかるので、この方法が画期的だったのである。
財務部をバカにしていませんか?そして、在庫でいちばんやっかいなのは、たとえ売れずにお金が入ってこない場合でも、その商品を売ってくれた卸業者などの生産者には先に代金を支払わなければならないということである。
キャッシュ・インがないのにキャッシュ・アウトがある。
これは、明らかに損だ。
つまり、在庫が存在するというだけでは損にしかならないのである。
75ページの例を見ればわかるように、在庫が残ったということはその分だけお金が減っているということなのである。
会社の倒産理由に「大量に在庫が発生したから」というのがある。
これは別に、在庫が大量にあるから店が商品だらけになってしまい、お客が入れなくなったから倒産した、というわけではない。
そして、売れ残ったということは、当然売り上げが減少しているわけだが、これもこの場合の倒産理由とは直接的な関係はない。
直接的に関係してくるのは、「お金がなくて仕入れ先への支払い期日までに代金が支払えなかった」ということだけなのである。
「資金繰りのショート」と呼ばれるものだ。
「資金がショートした」といえば多少かっこいいが、要は、赤字だろうが黒字だろうが関係ない、単にお金がなかったというだけの話なのである。
大企業だろうが中小企業だろうが関係なく、資金がショートしたらたいていの会社は倒産である。
大企業には財務部という部署があるが、この部署は単に銀行からお金を借りる窓口というわけではない。
銀行からいつどのくらいお金を借りて、いつどのくらい返せば資金がマイナスにならないかということをこと細かく計算して、資金ショートの回避のために日々心血を注いでいる部署なのである。
「資金がショートしないように、多めに借金をしたり、多めに貯金をしておけばいいじゃないか」と思う方もいるだろうが、そう話は単純ではない。
多めに借金をしたら、当然利子も多く支払わなければならないので利益を圧迫することになる。
また、多めに貯金をすれば、「だぶついたお金があるのなら、株主への配当や、もっと利まわりのいい投資にまわすべきだ!」という株主からの圧力が出てくる。
つまり、ギリギリのラインで資金を持っておく、という難儀なことを行う部署が財務部なのである。
これまで「どうせお金の出し入れをしているだけなんだろ〜」と財務部をバカにしてきた人は、ぜひ見直してあげてほしい。
「手形ってなに」と聞かれたら答えられるか?さて、ここで資金ショートの回避策についてもお話ししておこう。
もちろん、銀行からお金を借りてその場をしのぐという手もあるが、これは次善の策である。
最善の策は、次の格言に集約されている。
まずは、仕入れ先への支払いを遅くしてもらう。
手形という名のお札よりちょっと大きめの紙には、通常、「100万円を3カ月後に支払います」「1000万円を6カ月後に支払います」ということが書かれている。
これを仕入れ先に渡すことによって支払い期限を引き延ばし、そのあいだに売り上げを上げるなり、銀行から借金をするなりして、資金の工面を行うのである。
無利息でお金を借りる資金調達法こうして支払いを遅くしてもらったら、次は回収を早くする。
ここでいう回収とは、別に借金の取り立てを行うという意味ではなく、「売り上げたけれど、まだ代金をもらっていないものについて、少しでも早く代金をもらう」ということである。
「売り上げたけれど、まだ代金をもらっていない」なんてありえるのか、と思う方もいるかもしれないが、世の中の会社の大半は売り上げが先で、代金をもらうのはそれからだいぶあとになってからなのである。
売り上げてから代金が入るまでの状態を掛という。
この掛の期間は当事者間で決めるのだが、回収を早くするためには、この期問をできるだけ短くするように交渉するのである。
単ページは、単に回収日が早くなっただけではない。
2月の1カ月間、無利息でお金を借りたことに匹敵する効果を得ているのである。
なぜなら、もし1月31日に100円がどうしても必要なとき、経営者は100円をどこからか借りてくるしかない。
そして、借りるなら当然利息が発生してくる。
ところが労せずして1月31日に100円を用意することができるのである。
このことを、経営者のあいだでは「無利息でお金を借りた」と表現する。
無利息でお金を借りる、これほど効果的な資金調達方法はない。
「どうして掛なんてするの?いつも現金取引すればいいじゃない」と思う方もいるかもしれないが、これも簡単な話ではない。
個人の場合なら、同じお店で買い物をすることなど多くても1日数回だろう。
しかし、会社間では、1日に何十、何百という取引を同じ相手とする場合があるのは面倒だし、ひとつひとつ請求書や領収書を用意するのもたいへんだ。
だから、ひと月分まとめて1回で支払う、ということをするのである。
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